LibeSIM

山本 真基

2026/10/28 01:00

USIM/ISIMアプリケーションとは?SIMとの違いとADF・EFの構造を解説

USIM/ISIMアプリケーションとは?SIMとの違いとADF・EFの構造を解説

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本ウェビナーでは、SIMカードとeSIMの違い、eUICC・プロファイル・SM-DP+の関係、プロファイルを遠隔で書き込む仕組みなどを、図を交えて約15分で解説します。

記事とあわせて全体像を整理したい方や、業務でeSIMを扱い始めた方におすすめです。学び直しや社内での情報共有にもご活用ください。

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こんにちは、コモン・クリエーションでIoT・SIMエンジニアリングサービスの事業責任者をしている山本です。 本記事では、SIM カードの中で実際に働いている「アプリケーション」である USIM と ISIM を取り上げ、ADF 配下の主要なファイル(EF)とサービステーブルの読み方まで踏み込んで解説します。

はじめに

SIM カード(UICC)は、複数のアプリケーションを搭載できるプラットフォームです。モバイルネットワークへの接続を担うのが USIM、VoLTE などの IMS サービスへの登録を担うのが ISIM です。プロファイル設計や相互接続試験の現場では、「どの EF に何が入っているか」「サービステーブルのどのビットが立っているか」を読めることが実務の基礎になります。

本稿では、以下の項目を 3GPP TS 31.101/31.102/31.103 に基づいて整理します。

  • USIM と ISIM とは何か、UICC との関係

  • ADF_USIM 配下の主要 EF(IMSI、鍵、位置情報など)

  • サービステーブル(UST/IST)の役割とビットマップの読み方

  • 5G 対応で追加された DF_5GS 配下の EF


1. まず全体像から — USIMとISIMをざっくり理解する

たとえるなら、UICC はスマートフォン本体、USIM や ISIM はそこにインストールされたアプリです。本体(UICC)は OS とファイルシステムという土台を提供し、アプリ(USIM/ISIM)はその土台の上で、それぞれ固有のデータと機能を持ちます。

  • UICC(Universal Integrated Circuit Card): ICC カードのハードウェアと OS からなるプラットフォーム

  • USIM(Universal Subscriber Identity Module): 3G/4G/5G のモバイルネットワークに接続し、加入者認証を行うためのアプリケーション

  • ISIM(IP Multimedia Services Identity Module): VoLTE や SMS over IP を支える IMS(IP Multimedia Subsystem、IP ベースの通話・メッセージ基盤)に登録するためのアプリケーション

役割分担はシンプルです。「電波をつかんでネットワークに入る」仕事が USIM、「その上で通話やメッセージのサービスにログインする」仕事が ISIM です。1 枚の UICC に両方を同居させられますが、ISIM の搭載は任意です。

各アプリケーションは、ファイルシステム上では ADF(Application Dedicated File、アプリケーション専用ディレクトリ)として存在します。全体の配置は次の通りです。

AID(Application Identifier、アプリケーション識別子)は ETSI TS 101 220 で採番されており、3GPP の RID A000000087 に続くコードが 1002 なら USIM、1004 なら ISIM です。端末は EF_DIR を読んで搭載アプリを把握し、SELECT コマンドで AID を指定してアプリを起動します。この選択の仕組みは UICC論理構造詳解で扱っています。


2. 仕様の三層構造 — TS 31.101/102/103の関係

USIM/ISIM の仕様は、共通部分と個別部分に分かれています。

仕様

内容

位置づけ

ETSI TS 102 221

UICC と端末の物理・論理インターフェース

プラットフォーム共通

3GPP TS 31.101

3GPP 端末向けの UICC インターフェース共通事項

TS 102 221 の 3GPP 向け適用

3GPP TS 31.102

USIM アプリケーションの特性(EF 定義・コマンド)

USIM 固有

3GPP TS 31.103

ISIM アプリケーションの特性(EF 定義・コマンド)

ISIM 固有

APDU や論理チャネルという土台は TS 102 221/31.101 が定め、TS 31.102/31.103 が「その上に置くファイルとサービス」を定めます。本稿で扱うのは後者です。


3. ADF_USIMの主要EF

3-1. 加入者識別・認証・位置情報のEF

ADF_USIM 配下には数十個の EF が定義されていますが、実務でまず押さえるべきものを挙げます(TS 31.102 §4.2)。

EF

ファイル ID

構造

内容

EF_IMSI

'6F07'

透過

IMSI(最大 15 桁)。READ は PIN、UPDATE は ADM

EF_UST

'6F38'

透過

USIM サービステーブル(必須)

EF_Keys

'6F08'

透過

暗号鍵 CK・完全性鍵 IK・鍵セット識別子 KSI(33 バイト)

EF_LOCI

'6F7E'

透過

CS 系の位置登録情報(TMSI/LAI)

EF_FPLMN

'6F7B'

透過

禁止 PLMN リスト

ここで注意したいのは、加入者の秘密鍵 K(認証用の共有秘密鍵)はどの EF にも現れないことです。K は USIM 内部に保持され、外部からは読み出せません。端末は AUTHENTICATE コマンドで計算を依頼するだけです。

もう 1 つの変化として、EF_IMSI は現行仕様で「Optional」です。5G では SUPI に IMSI 以外の形式を使えるため、サービス n°130 が有効な場合は EF_IMSI を置かない構成が定義されています(TS 31.102 §4.2.2)。「SIM には必ず IMSI がある」という常識は、5G 世代で崩れ始めています。

3-2. EF_UST(USIMサービステーブル)

EF_UST(USIM Service Table)は、その USIM がどのサービスに対応しているかを示すビットマップで、USIM で必須の EF です(TS 31.102 §4.2.8)。端末は UST で「available」と示されていないサービスを選択してはならない、と規定されています。つまり UST は、端末とカードの間の「機能のネゴシエーション表」です。

構造は 1 バイトに 8 サービスを割り当てる単純なビットマップです。

1 バイト目: b1 = Service n°1、b2 = n°2、…、b8 = n°8
2 バイト目: b1 = Service n°9、…(以降同様)

例: 1 バイト目が '0A' (= 0000 1010)
    → b2(Service n°2: FDN)と b4(Service n°4: SDN)が利用可能

代表的なサービス番号を挙げます。

  • n°2: Fixed Dialling Numbers(FDN、発信先制限)

  • n°21: MSISDN(電話番号の保持)

  • n°28: Data download via SMS-PP(OTA の入口)

  • n°30: Call Control by USIM(発信制御)

  • n°125: SUCI calculation by the USIM(SUCI 計算を USIM 側で実施)

EF_UST の UPDATE は ADM 権限です。どのビットを立てるかは発行時のプロファイル設計で決まります。eSIM では、この UST を含む EF 群一式がプロファイルとしてダウンロードされます。


4. DF_5GS — 5G対応で追加されたEF群

5G(5GS)対応のために、ADF_USIM の下に DF_5GS というディレクトリが追加されました。TS 31.102 §4.4.11 によると、DF_5GS はサービス n°122〜145 のいずれかが UST で「available」な場合に存在します。主なサービスは次の通りです。

  • n°122: 5GS Mobility Management Information

  • n°123: 5G Security Parameters

  • n°124: Subscription identifier privacy support(SUCI 用データの保持)

  • n°125: SUCI calculation by the USIM

DF_5GS 配下の代表的な EF には次のものがあります。

EF

内容

EF_5GS3GPPLOCI ('4F01')

5G-GUTI(13 バイト)+最終登録 TAI(6 バイト)+5GS 更新状態(1 バイト)

EF_SUCI_Calc_Info ('4F07')

SUCI 計算用のホームネットワーク公開鍵と保護スキーム

EF_Routing_Indicator ('4F0A')

SUCI に含めるルーティングインジケータ

EF_URSP ('4F0B')

UE ルート選択ポリシー(URSP)の事前設定

実務上のインパクトが大きいのは SUCI 関連です。SUCI(Subscription Concealed Identifier)は SUPI を暗号化して秘匿する 5G の仕組みで、サービス n°125 が有効なら USIM 自身が暗号化を計算し、無効なら端末が EF_SUCI_Calc_Info の公開鍵を読んで計算します。詳細は 5G時代のSIMで扱います。


5. ADF_ISIMの主要EF

ISIM が保持するのは、IMS の世界での「名前」と「所属」です。モバイルネットワーク用の IMSI に対応するものとして、IMS では 2 種類の識別子を使います。

  • IMPI(IMS Private User Identity): 認証に使う私的識別子。user@operator.com のような NAI 形式。加入者に 1 つ。

  • IMPU(IMS Public User Identity): 通話やメッセージの宛先として公開される識別子。sip:+81901234xxxx@operator.com のような SIP URI 形式。1 つの IMPI に複数持てる。

主要 EF は次の通りです(TS 31.103)。

EF

構造

内容

EF_IMPI ('6F02')

透過

私的ユーザ識別子(NAI)

EF_DOMAIN ('6F03')

透過

ホームネットワークのドメイン名(SIP REGISTER の宛先ドメイン)

EF_IMPU ('6F04')

レコード

公開ユーザ識別子(SIP URI)。複数レコード

EF_IST ('6F07')

透過

ISIM サービステーブル

EF_P-CSCF ('6F09')

レコード

P-CSCF(IMS の入口サーバ)のアドレス。先頭レコードが最優先

EF_IST(ISIM Service Table)は UST と同じビットマップ形式で、P-CSCF アドレスの保持、GBA(Generic Bootstrapping Architecture)、SM-over-IP 対応などの有無を示します。

認証面では、ISIM も USIM と同様に秘密鍵 K を内部に保持し、AUTHENTICATE コマンドで IMS AKA を実行します。AUTHENTICATE コマンドの動作は次回のAKA認証詳解で掘り下げます。


6. USIMとISIMの対比

最後に両者を並べて整理します。

観点

USIM

ISIM

目的

モバイルネットワークへの接続・認証

IMS(VoLTE 等)への登録・認証

主な識別子

IMSI / SUPI

IMPI / IMPU

認証

UMTS AKA / EPS AKA / 5G AKA

IMS AKA

サービステーブル

EF_UST

EF_IST

準拠仕様

3GPP TS 31.102

3GPP TS 31.103

搭載

必須(3GPP 網接続の前提)

任意(無ければ USIM から導出)

eSIM の文脈では、ここで見た ADF・EF 群・サービステーブルのビット設定のすべてがプロファイルの構成要素になります。プロファイル設計とは、突き詰めればこれらのファイルに何を書き込むかを決める作業です。


まとめ

  • UICC はプラットフォーム、USIM/ISIM はその上のアプリケーションであり、ファイルシステム上は ADF として存在する。AID(3GPP RID A000000087 + 1002/1004)で選択される。

  • ADF_USIM の中心は EF_IMSI・EF_Keys・EF_UST など。秘密鍵 K は EF として存在せず、外部から読み出せない。

  • EF_UST は「この USIM が対応するサービス」を示す必須のビットマップで、端末はこれに従って機能を有効化する。ISIM 側には同形式の EF_IST がある。

  • 5G 対応では DF_5GS が追加され、5G-GUTI や SUCI 計算用の公開鍵、URSP などを保持する。EF_IMSI が省略される構成も 5G 世代で定義された。

  • ISIM は IMPI/IMPU/ドメイン名という IMS の識別子を保持し、IMS AKA を実行する。

EF は「識別子・鍵・サービステーブル・ネットワーク状態」の 4 分類で捉えると、初見のファイルでも仕様書のどこを引くべきかが見えてきます。


参考規格

  • 3GPP TS 31.101 — UICC-terminal interface; Physical and logical characteristics

  • 3GPP TS 31.102 v19.4.0 — Characteristics of the USIM application

  • 3GPP TS 31.103 — Characteristics of the ISIM application

  • ETSI TS 102 221 v18 — Smart Cards; UICC-Terminal interface; Physical and logical characteristics

  • ETSI TS 101 220 — Smart Cards; ETSI numbering system for telecommunication application providers

おわりに

弊社では「LibeSIM」として、SM-DP+やMVNO回線、eIM(eSIM IoT Remote Manager)、eUICC、IPA/LPAのご提供を行っております。 ご興味がございましたら、デモやPoC等行っておりますので、ぜひお問い合わせください。

https://common-creation.com/service/libesim

山本 真基

山本 真基

コモン・クリエーション株式会社

執行役員 LibeSIM事業責任者

当社にて、eSIM Tech Partner「LibeSIM」の立ち上げ・事業推進を主導。SM-DP+・eIM・MVNOをワンストップで提供し、eSIMの運用に必要なすべてをオープンに選択できる環境の実現を目指す。国内唯一のeIMプロバイダーとして、SGP.32時代のIoT接続管理の最前線に立つ。