LibeSIM
2026/05/01 11:00
ICCIDとは?UICCとeUICCで対応関係が変わる識別子の話

こんにちは、コモン・クリエーションでIoT・SIMエンジニアリングサービスの事業責任者をしている山本です。
本記事では、よくご質問いただくSIMカードの番号について解説していきます。
はじめに
モバイル通信の世界では、SIMカードや eSIM を識別するためのさまざまな番号が用いられています。なかでも ICCID、EID は、SIM/eSIM を扱うエンジニアにとって避けて通れない基本的な識別子です。
これらは一見似たような「番号」に見えますが、それぞれ異なるレイヤーの識別子であり、特に従来の物理 UICC と eUICC(embedded UICC、いわゆる eSIM チップ)では、ICCID の意味合いが大きく変化します。
本稿では、
ICCID / EID とは何か
それぞれの番号体系と構造
UICC(物理 SIM)における「ICCID = 物理カード」という関係
eUICC(eSIM)における「EID = eUICC、ICCID = プロファイル」という関係
について、仕様に基づいて整理します。
1. 用語と仕様の整理
識別子 | 正式名称 | 対象 | 主な準拠規格 | 長さ(桁数) |
|---|---|---|---|---|
ICCID | Integrated Circuit Card Identifier | UICC カード/eSIM プロファイル | ITU-T E.118 | 最大 20 桁(一般的に 19〜20 桁) |
EID | eUICC Identifier | eUICC(物理チップそのもの) | GSMA SGP.02/SGP.22 | 32 桁固定 |
ポイントは次の通りです。
ICCID は「SIM/eSIM のシリアル番号」に相当する。UICC では 1 枚の物理カードに 1 つ、eUICC では 1 つのプロファイルごとに 1 つ。
EID は eUICC というハードウェアそのものの識別子であり、eUICC でのみ存在する。
2. ICCID(Integrated Circuit Card Identifier)
2-1. 概要
ICCID は ITU-T 勧告 E.118 で定められた、UICC(SIM カード)や eSIM プロファイルを一意に識別する番号です。カード裏面やパッケージに印字されている数字がこれに相当します。
2-2. 構造
ICCID は以下の要素から構成されます。
ICCID = MII (2桁) + Country Code (1〜3桁) + Issuer ID (可変) + Individual Account ID (可変) + Check Digit (1桁)フィールド | 長さ | 説明 |
|---|---|---|
MII(Major Industry Identifier) | 2 桁 | 業界識別子。通信事業者は常に |
Country Code | 1〜3 桁 | ITU-T E.164 準拠の国番号(例:日本 |
Issuer Identifier | 可変 | 発行事業者(MNO/MVNO/eSIM 発行者)を示す |
Individual Account Identifier | 可変 | 事業者内での連番 |
Check Digit | 1 桁 | Luhn アルゴリズムによるチェックディジット |
先頭の MII + Country Code + Issuer Identifier の部分をまとめて IIN と呼びます。
IINは電気通信連合(ITU-T)が管理しており、日本では総務省経由で申請を行うことで取得することが可能です。
弊社もIINを取得しており、弊社が提供するLibeSIMでは、89 81 19のIINでeSIMプロファイルのICCIDを発行をしています。
3. EID(eUICC Identifier)
3-1. 概要
EID は eUICC(embedded UICC、eSIM 用のチップ)そのものを識別するための 32 桁の番号です。GSMA の SGP.02(M2M 向け)および SGP.22(コンシューマ向け)で定義されています。
EID は、eUICC を製造した時点でチップに書き込まれ、工場出荷以後は変更されません。
3-2. 構造(GSMA SGP.02 / SGP.29)
EID は 32 桁の数字で構成され、以下のフィールドから成ります。
フィールド | 長さ | 説明 |
|---|---|---|
Major Industry Identifier (MII) | 2 桁 | 常に |
Country Code | 3 桁 | eUICC 製造業者の属する国(ITU 割当) |
Issuer Identifier | 3 桁 | eUICC 製造業者コード |
Platform / OS Version | 5 桁 | プラットフォーム・OS バージョン |
Manufacturer-specific data | 18 桁 | 製造者固有のシリアル番号 |
Check Digit | 1 桁 | Luhn によるチェックディジット |
先頭 2 桁が 89 であることや、チェックディジットの計算方法は ICCID と共通です。そのため、EID はしばしば「拡張された ICCID の親戚」として説明されますが、対象が物理チップであるという点で本質的に異なります。
4. UICC と eUICC における識別子の「対応関係」の違い
ここからが本稿の中心です。ICCID と「物理カード」の関係が、UICC から eUICC に移行することでどう変わるのかを見ていきます。
4-1. 従来の UICC(物理 SIM カード)の場合
物理 SIM カードは、
1 枚のカード = 1 つの UICC
1 つの UICC = 1 つの ICCID
1 つの UICC = 1 つのプロファイル(通常は焼き込み済み)
という関係にあり、ICCID は「その物理カードそのもの」を識別する番号として機能します。

つまり UICC 時代の世界観では、
「ICCID = 物理カード」
という等式が成立しており、MNO のシステムでも「ICCID をキーに物理カードを管理」するのが一般的でした。カードを変えれば ICCID も変わる、というシンプルな構造です。
4-2. eUICC(eSIM)の場合
eUICC は端末に組み込まれたチップで、複数のプロファイルを書き込んだり消したりできるという点で決定的に異なります。
ここで、識別子の役割が次のように分離されます。
EID:eUICC(チップ)そのものを識別する番号。端末に組み込まれたチップ 1 つに対して 1 つ。書き換え不可。
ICCID:eUICC に書き込まれた各プロファイルを識別する番号。プロファイルごとに 1 つ。

したがって、eUICC の世界では等式が2 段階に分かれます。
「EID = eUICC(物理チップ)」
「ICCID = eSIM プロファイル(論理エンティティ)」
1 つの eUICC(= 1 つの EID)の上に、複数の ICCID(プロファイル)が共存できるわけです。プロファイルをダウンロードすれば新しい ICCID が増え、削除すればその ICCID は消えます。
4-3. まとめ表
観点 | 物理 UICC | eUICC(eSIM) |
|---|---|---|
ハードウェアの識別子 | (事実上)ICCID で代用 | EID(32 桁) |
プロファイルの識別子 | ICCID(カードと一体) | ICCID(プロファイル単位で付与) |
ハードウェア:プロファイルの関係 | 1:1(固定) | 1:N(可変、リモート書換可能) |
プロファイルの差し替え | 物理カード交換が必要 | リモート(RSP:Remote SIM Provisioning) |
ICCID を見れば特定できるもの | 物理カード | プロファイル |
物理チップを特定したいときに参照する番号 | ICCID | EID |
5. なぜこの分離が重要なのか
eUICC で EID と ICCID が分離された背景には、RSP(Remote SIM Provisioning) という仕組みがあります。
GSMA の SGP.22 などで定義される RSP では、
事業者(MNO)は SM-DP+(Subscription Manager - Data Preparation+)でプロファイルを準備し、
端末は自分の EID を提示して、
そのプロファイル(ICCID を含む)をダウンロード・インストールする、
というフローを取ります。
EID =「どの eUICC に対してプロファイルを発行するか」を特定する鍵
ICCID =「どのプロファイルを発行/管理するか」を特定する鍵
つまり、EID はハードウェアのアイデンティティ、ICCID はサブスクリプション(契約)のアイデンティティ、と完全に役割が分かれています。これにより、
1 台の端末で複数キャリアを切り替える(Dual SIM / Multi-IMSI)
海外渡航時に現地プロファイルをダウンロードして使う
IoT デバイスを工場出荷後に遠隔でプロビジョニングする
といったユースケースが可能になっています。
6. まとめ
ICCID は SIM/eSIM プロファイル 1 つに 1 つ付与されるシリアル番号。
EID は eUICC(物理チップ)1 つに 1 つ付与される 32 桁の識別子。
物理 UICC では「ICCID = 物理カード」という 1 対 1 対応が成立していた。
eUICC では対応関係が分解され、
EID = eUICC(物理チップ)に 1 対 1
ICCID = eSIM プロファイル(論理エンティティ)に 1 対 1 となる。
eSIM 時代の SIM 管理を正しく理解するためには、「物理」と「論理」を EID と ICCID で分けて考えるという視点が不可欠です。
UICC 時代の「ICCID ≒ カード」という直感に引きずられないよう、EID と ICCID の役割をしっかり区別することが、eSIM サービス設計・運用の出発点になります。
参考規格
ITU-T E.118 — The international telecommunication charge card
ISO/IEC 7812-1 — Identification cards — Identification of issuers
GSMA SGP.02 — Remote Provisioning Architecture for Embedded UICC (M2M)
GSMA SGP.22 — RSP Technical Specification (Consumer)
GSMA SGP.29 — EID Definition and Assignment Process
3GPP TS 31.102 — Characteristics of the Universal Subscriber Identity Module (USIM) application
おわりに
弊社では「LibeSIM」として、SM-DP+やMVNO回線、eIM(eSIM IoT Remote Manager)、eUICC、IPA/LPAのご提供を行っております。 ご興味がございましたら、デモやPoC等行っておりますので、ぜひお問い合わせください。