Med-Well
2026/05/18 11:13
電子カルテ情報共有サービスにつなげる - ベンダー登録と接続テストの話~ 電子カルテ情報共有サービスとMed-Well 第五回目

こんにちは!総合病院向けのLINE窓口システム「Med-Well(メドウェル)」を提供するコモン・クリエーションです。本記事は「電子カルテ情報共有サービスとMed-Well」シリーズの第5回(最終回)です。
【シリーズ「電子カルテ情報共有サービスとMed-Well」】
電子カルテ情報共有サービスに繋ぐまでの道のり — ベンダー登録と接続テストの話 ◀ 今見ている記事
ここまでの4回で、制度的な位置づけ・接続方式・IFファイル構造・FHIR / JP-CLINS のリソース構成と、技術仕様の話を順番に見てきました。最終回となる今回は、「実際に電子カルテ情報共有サービスに繋ぐためにはベンダーとして何をすればいいのか」という実務寄りのトピックを扱います。医療機関等 ONS でのベンダー登録から、オフラインでの接続テスト(Phase 1)、オンライン請求ネットワーク経由の接続テスト(Phase 2)までの流れを、実際に手を動かして調べた内容も交えてまとめます。
電子カルテ情報共有サービスはまだ正式運用前で、令和8年度冬に仕様3.0が公開予定です。今後の仕様改訂で内容が更新されていく前提でお読みください。
接続試験の3つのステップ
医療機関等 ONS ベンダー登録
Phase 1:オフライン接続テスト(テストデータ/バリデータを使ったローカル検証)
Phase 2:オンライン接続テスト(接続検証環境への実接続)
以下、それぞれのステップについて解説します。
ステップ1:医療機関等 ONS ベンダー登録
最初に必要なステップは、医療機関等 ONS(開発ベンダ用ポータル)へのアカウント発行申請 です。電子カルテ情報共有サービスを運営する社会保険診療報酬支払基金は、技術文書や接続テストに必要な資材を、すべてこの ONS の中で配布しています。
技術解説書・接続テスト計画書・外部インターフェイス仕様書・データサンプル・バリデータといった 主要資料の多くは、ONS にログインしないとアクセスできません。検索エンジンで一般公開されているのは概要レベルの資料に留まり、実装に必要な細かい仕様(IFファイルの項目定義、エラーコード一覧、JP-CLINS のプロファイル制約など)はすべて ONS の中にあります。
つまり、まず ONS アカウントを取得しないと、調査・設計に着手することすらできない構造になっています。
ONS アカウント発行の申請
申請方法は、「医療機関等システムベンダ向け ONS アカウント発行申込書」に必要事項を記入してメール提出するというアナログなものです。
申請期間:随時
通知:申請から約5営業日でログイン用 ID・パスワードがメール送付される
ドキュメント類のほか、後述するテスト申請も ONS から実施するため、まずはここを通すのが必須作業です。
詳細は、こちらのドキュメントを参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001010156.pdf
ステップ2:Phase 1 — オフライン接続テスト
ONS アカウントが取得できたら、Phase 1:オフライン接続テスト(実施要領上の「テストフェーズ1」)に着手できます。Phase 1 は 回線接続を一切行わずに、テストツールを使って自社環境の中でデータの整合性を検証するフェーズです。
Phase 1 で確認すること
Phase 1 で確認するのは以下の3点です。
自社の電子カルテシステム(あるいは連携モジュール)が、記録条件仕様書/JP-CLINS 実装ガイドに沿った正しい FHIR JSON を出力できているか
結果ファイル(CIS-IF-102 文書情報登録結果 など)を取り込み、正常系・異常系のレスポンスを自社システム上で適切に処理/表示できるか
試験実施の流れ
ONSで以下のファイルやツールが配布されています。これらをダウンロードしたうえで、ローカル環境で検証を行います
データサンプル:診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果報告書・患者サマリーの JSON / XML サンプル(Ver1.07)
テストデータ:医療機関等ベンダ別資格情報と紐づくテストデータ一式(Ver1.05)
テストシナリオ:機能ごとに手順と期待結果が書かれた資料
文章情報検証ツール:JSON が FHIR記述仕様 / JP-CLINS に沿っているかを検証する JAR ツール
Phase 1 のメインは、文章情報検証ツールです。これは、出力した JSONが要求仕様に沿っているかどうかを検証するバリデーションツールです。
記録条件仕様ファイルバリデータをうごかしてみる
このバリデータはJavaアプリケーションになっており、ローカル環境のコマンドラインとして動作します。

実行すると、inputで配置したJSONに対して、添付のような結果ファイルが生成されます。結果は JSONで、エラー事項等が細かく示されたデータになっています。

ステップ3:Phase 2 — オンライン接続テスト
Phase 1 で JSON の妥当性が確認できたら、次は Phase 2:オンライン接続テスト(テストフェーズ2)です。支払基金が提供する接続検証環境に自社システムを実際に接続して、フルスタックでの疎通を確認します。
Phase 1 と違って、Phase 2 には オンライン請求ネットワークへの接続認可・回線・電子証明書・資格確認端末 といった外部要素が絡んできます。順番に整理していきます。
Phase 2 の申請と、支払基金からの通知の流れ
Phase 2 に進むには、まず ONSに記載されている「医療機関等ベンダ接続テスト申請サイト」 から利用申請を行います。初期の申請時には、以下の書類添付が必要です。
「オンライン請求ネットワーク利用に関するシステムベンダ及び販売会社等届」
登記簿の写し
申請が受理されると、支払基金から メールと郵送(簡易書留)の2経路 で必要な情報が届きます。
【メールで届くもの】
接続検証環境へのログイン ID・パスワード等のユーザー設定情報
オンライン請求ネットワークの接続試験を実施済みの場合:申請から約5営業日で通知
未実施の場合:申請月の翌月10日に通知
システムベンダ・販売会社コードが記載された「システムベンダ及び販売会社コードの決定について(お知らせ)」(未実施ベンダのみ)
【郵送(簡易書留)で届くもの】
電子証明書発行通知書
電子証明書インストールパスワード
IP-VPN ネットワーク設定手順の参考情報として「オンライン請求システム操作手順書(抜粋版)」を収録した CD-ROM
メール通知から CD-ROM 到着までさらに約5営業日かかるため、申請から実際にテスト環境に接続できる状態になるまで 最短でも2〜3週間 はリードタイムを見ておく必要があります。電子証明書の有効期間は 発行日から1年間 で、有効期限延長はできません。翌年度も Phase 2 を継続する場合は改めて申請が必要です。
オンライン請求ネットワークへの接続
接続検証環境は インターネット経由では接続できません。オンライン資格確認等システムや電子処方箋管理サービスと同じく、オンライン請求ネットワーク(医療機関と支払基金/国保連を結ぶ閉域網)を経由する必要があります。
接続方式は、接続試験実施要領(令和8年4月版)に明記されている次の2系統のみです。
IP-VPN 接続:閉域 IP 網を利用した接続。光回線必須で、IP-VPN サービス提供事業者と契約する
IPsec + IKE 接続:オープンなインターネット上で、IPsec(IP レベルの暗号化)と IKE(鍵交換プロトコル)を組み合わせて閉域網と同等のセキュリティを確保する方式
IPsec + IKE で繋ぐ場合のネットワーク条件
すでにインターネット回線がある環境で軽量に導入できるのは IPsec + IKE 接続 です。指定の接続サービス提供事業者に問い合わせ、オンライン請求NWに繋がる構成をセットアップしてもらう必要があります。
Phase 2 の標準的な実施構成
接続テスト計画書では、ベンダー側で用意するものとして以下のコンポーネントが挙げられています。
資格確認端末(Windows 端末)と、そこにインストールする オンライン資格確認等連携ソフト(ONS よりダウンロード可能)
環境切替ツール(接続先を本番/接続検証/接続検証第二に切り替える)
電子証明書(接続検証環境へのアクセスに必要。申込後、ONS より送付される)
連携アプリケーション(資格確認端末からファイル連携する場合)
ベンダー側の 電子カルテシステム等 本体(API もしくはファイル連携で連携アプリケーションと繋がる)
第2回・第3回で見た「資格確認端末を経由したファイル連携方式」を採用するなら、電子カルテシステムが連携ソフトの指定フォルダに CIS-IF-101 の要求ファイル(XML、中に FHIR JSON が入っている)を置くと、連携ソフトがオンライン請求ネットワーク経由でリクエストを送り、結果ファイルを所定のフォルダに置き戻す、という流れになります。Web API 通信方式の場合は、連携ソフトを介さず直接 Web API を呼ぶ構成です。

Phase 2 で確認するテスト要件
接続検証環境では、実際の電子カルテ共有サービス(検証環境)に対して、ファイルを連係していきます。
データ登録:3文書6情報+患者サマリーの JSON と登録要求 IF ファイルを作って、サービスに正常に登録できること。意図的にエラーを発生させたとき、自社システム側でエラー処理/表示が正しくできること
データ取得・照会:取得・照会要求 IF ファイルでサービスからデータを取り出し、自社の電子カルテシステムの照会画面で表示できること。エラー時の処理/表示も同様に確認
資格情報に紐づかないテストデータの機能確認:電子カルテ情報共有サービス施設利用状況回答(OQS-IF-045/046)、マスタファイル取得(CIS-IF-301/302)など
Phase 1 と違って 環境を他社と共有しているテスト なので、テストデータの登録時には自社に割り当てられた 保険医療機関番号 と 被保険者番号等 のみを使用し、自社以外の資格情報を誤って使わない、診療情報提供書の自社内テストでは送付先も自社にする、といった運用ルールが細かく規定されています。
テスト完了後:結果報告とチェックリスト提出
Phase 2 のテストが完了したら、「別紙_医療機関等運用テスト・運用開始に係るチェックリスト」 を ONS のアンケートフォームから提出します。提出後、テスト実施状況の把握のためヒアリングが行われる場合があります。
なお、接続試験の テスト結果の連絡は支払基金側からは行われません。テストシナリオに沿って自社で結果を確認し、問題が解決しない場合は ONS のお問い合わせフォームから照会する流れになります。
結び
5回にわたって電子カルテ情報共有サービスを掘り下げてきました。
電子カルテ情報共有サービス自体の記事はたくさんあれど、ベンダー目線で必要な情報は、ONSの中を漁って情報収集していく以外にありません。さらに、現在進行系で仕様策定が進んでいるなかで様々なドキュメントがONSに存在しており、実装仕様やテスト方法などの全体像を掴むことに苦労するのではないかと思います。
これから電子カルテ情報共有サービスへの対応を検討しているベンダーの方は、まずはONSに登録のうえ、これらの情報を整理してどこにどういう情報が記載されているのか?の全体感を把握することをおすすめします。
Med-Wellは、電子カルテ情報共有サービス対応を含め、医療機関のDXを現場目線でサポートしていきます。仕様3.0の公開や運用開始の早いタイミングで医療現場のお役に立てるサービス提供ができるよう、今後も準備を進めてまいります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。